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「社内公用語を英語に」の前に
(株)テンナイン・コミュニケーション 代表取締役 工藤浩美 ■企業が「英語公用語化」を進める背景
スピード,広がり,深さ,すべての面でグローバル化は加速している。それを背景に2010年頃から楽天やファーストリテイリングを筆頭に,英語公用語化を導入する企業が増え話題になった。外資系が多いメディカル分野や海外展開に積極的なメーカーなどでは所属する人員の過半数を外国人が占めるケースもあり,以前より英語は重要なコミュニケーションツールであった。しかし英語の必要性が薄かった日本企業も,ある日外資によるM&Aが発表され,英語公用語化に大きく舵取りされるケースはある。また最近では中小企業や個人の方からも海外取引のご相談を数多く受ける。かつて海外進出は大手企業が中心であったが,今では様々な分野の企業が今後の事業ビジョンとして海外進出を考えている。その際一番の問題になるのが「言葉の壁」である。 ■英語公用語化のメリット・デメリット
企業の英語公用語化には,メリットとデメリットの両面がある。何といっても導入企業の一番のメリットはコミュニケーションの充実である。第三者を介さず自分の考えていることを外国人のビジネスパートナーに伝えることができれば,より円滑にそしてスピーディーにビジネスを推進できる。次のメリットとして,職場が英語環境になれば,グローバル市場から優秀な人材を採用できることが挙げられる。そして企業だけでなく従業員側にもメリットが考えられる。まず,英語を身につければ,社内の評価が高くなるだけでなく,転職にも有利に働くだろう。さらに語学を学ぶということは,その国の文化や歴史を学ぶことにもつながるので,様々な未知の知識を吸収できる。また,外国人従業員が増えれば,職場環境もグローバルスタンダードになり,サービス残業や長時間労働はなくなり,有給休暇も取得しやすい雰囲気になっていくだろう。 ■企業が社員に求める語学力のレベルとは?
それでは企業が必要と考える英語のレベルはどのぐらいなのか? ほとんどの企業がTOEICの点数を客観的な目安としているが,異文化コミュニケーションの現場で求められているのは「相手の言葉をきちんと受け止め,また自分の意見をしっかりと発信できる」人材である。海外でのビジネスマナーや習慣の理解も重要だ。例えば外国人と初対面での握手が弱々しいものだとしたら,相手は“この人は信頼できるのか?”と不安を抱きかねない。相手を大切に思う気持ちが,コミュニケーションには不可欠である。英語力が少し不足していたとしても,「相手をもっと知りたい」「相手に自分を知ってもらいたい」という気持ちを1人ひとりが持つことが大事である。
(月刊 人事マネジメント 2017年6月号 HR Short Message より)
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長崎県出身。白百合女子大学卒。1985年大手商社に一般職入社後、結婚を機に退職。1990年、翻訳・通訳会社に正社員として再就職。2001年、株式会社テンナイン・コミュニケーションを創業。営業未経験ながら、1ヵ月半で年間2億円の契約を受注するなどビジネスを拡大させ、創業から15年で日本最大級の通訳・翻訳エージェントに育て上げた。通訳・翻訳者の登録者数は6,000名を超える。現在は、仕事も英語もできるビジネスパーソンを増やし、企業の海外展開やビジネス拡大を後押しすることを目指し、英語教育事業を推進。主な著書に『英語が会社の公用語になる日』(中経出版)、『同時通訳者が教える英語雑談の全技術』(KADOKAWA)など。 >> 株式会社テンナイン・コミュニケーション http://www.ten-nine.co.jp/ |