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リーダーマインドは“教える”から“育む”へ

(株)日本コンサルタントグループ コンサルティング部 横田恭一

 リーダー育成に限らずマインド(意識)を変える難しさを痛感されている方は多いでしょう。マインドを変える,高めるためには“教える”から“自ら育む”へ,アプローチを変える必要があります。以下,次世代リーダー育成の現場で実践している,リーダーマインドの効果的な育み方をお伝えします。

■リーダーの要件とマインドの関係

 次世代リーダーとは,近い将来「部門または事業部の運営」を担ってほしい人材です。まずは,期待されるリーダー像と能力要件を整理しておきましょう。期待されるリーダー像は「堅実に仕事を進める力,将来に備え現状を変える力,他者を巻き込む力を兼ね備え,成果を出すことができる人材」です。このリーダー像を支える能力要件は大きく3つあります。氷山モデルで整理してみましょう。
@海面上の領域……リーダーに求められる専門能力です。戦略,マーケティング,会計など経営管理に関する知識,技術です。
A海面に見え隠れする領域……マネジメント能力です。対人関係力,業務管理力,意思決定力などで構成されます。
B海面下の領域……リーダーに求められるマインドです。役割・期待行動に対する考え方など,自らを動かすエンジンにあたる要件です。このマインドを変える,高めることで,成長へ動機づけられます。またリーダーとしての魅力も増し,リーダーシップを発揮するうえで必要となるパワーの源泉になります。「価値観」「仕事観」が根差す領域であり開発が難しいといわれますが,うまくアプローチすれば変化は期待できます。

■リーダーマインドを育む方法

 マインドを育むためには,例えば「リーダーってそもそも何?」「何をする人?」など,その役割・期待行動などを「繰り返し考えさせる」ことが大切です。自ら考え,得た「気づき」をキッカケに「行動変容」を促し,それを繰り返すというアプローチがマインドを自ら育むことにつながります。具体的には持論の「整理→点検→再構築」の3つの手順を「短時間×多頻度」で実施していきます。
【手順1】持論の整理: リーダーとは? と問いかけますが,この問いに正解はありません。まずは「私はこう思う」を肯定することがスタートです。
【手順2】持論の点検: 持論に固執せず色々な刺激を受けて持論を点検する機会づくりが大切です。このプロセスが極めて重要であり,例えばシステム会社A社では,以下2つの取り組みを実施しています。
@外部講演聴講とレポート提出。自ら興味のある講演会を選ばせ,また「大局観とは」など聴講時に意識させたいキーワードを決めておきます。主体的に参画すれば持論を磨くためのヒント,気づきは必ず得られます。さらに,専門能力とマネジメント能力開発に併行して取り組むことで,新たな学びが刺激になり持論を磨くヒント,気づきにつながります。
A対話を通した相互研鑽の場づくり。具体的には,聴講で得たヒント,気づきを踏まえた10分程度の対話を多頻度で実施します。「聴講で得た気づきは?」「リーダーの役割は?」「大局観とは?」などの小テーマを付与し,対話を通じた気づきを促します。
【手順3】持論の再構築: 【手順2】から得たヒント,気づきを踏まえ持論を加筆修正してもらいます。さらにリーダー像(持論)に近づくための「行動変容課題」を設定し実践への動機づけを促します。
 A社では,一連の取り組みの前後で持論に大きな変化が見られました。その変化にメンバー自身が気づき,驚いていました。この現象はマインドが少し変わった,高まった現れではないでしょうか。

(月刊 人事マネジメント 2018年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
大学卒業後、自動車部品メーカーに入社。R&D部門の営業担当として、市販車とレース用部品の開発に携わる。多重下請構造の中間で仕事をするなかで、中小・中堅企業のマネジメント機能や営業機能強化の重要性を痛感し、経営コンサルタントを志す。(株)日本コンサルタントグループに入社後、営業担当、営業所長として、様々な業界に課題解決提案を行いながら、組織づくりや部下育成に携わる。現在は、ビジネスリーダー選抜・育成の制度設計・運用支援、営業強化、階層別研修、ネゴシエーション研修をテーマに活動している。

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