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残業をなくし,生産性を高める有効策

(株)識学 代表取締役社長 安藤広大

 長時間労働の要因には,会社側が要求する業務が個人のキャパシティをはるかに超えているというケースがあります。その場合の対策は,人員体制,業務の見直しを図っていくしかありません。一方,業務の量はそれほどでもないのに,評価制度の構造的問題や上司の何気ない言動が無駄な労働時間を増やしていることもあります。そこで,長時間労働をなくし,生産性を上げる有効策を2つご紹介します。

■有効策1:「頑張っている姿」の評価をやめる

 「いかに頑張っているか」「積極的に取り組んでいるか」というプロセス評価のウエイトが高い場合,「長く働いている」→「頑張っている」→「評価が上がる」という構図になるため,長時間労働が良いことだと誤認されてしまいます。また,「時間に対して給料が支払われる」という現実があり(現在の日本の法律ではどうすることもできませんが),これも長時間労働を助長している要因となっています。
 そこで,「頑張っている」や「積極的に取り組んでいる」という,感覚的なプロセス評価を取り除き,すべて「結果」という事実で評価し,給料を連動させる仕組みにすると,生産性は向上します。
 社内からは,「頑張っている姿もしっかり評価してほしい」「結果だけで評価するなんて,ウチの会社は優しくない」という声が出るかもしれませんが,それを聞き入れる限り,長時間労働はなくならないし,社員の成長も阻害されてしまいます。なぜなら,営利組織においての成長とは,「時間帯あたりの生産性が上がる」ということに他ならないからです。いかに短い時間に生産性を高めるかという業務遂行能力を鍛えるためには,感覚的な印象に頼ったプロセス評価をしてはいけないのです。
 ただ,「結果」を評価するといっても,「売上」や「最終成果」だけしか対象にしないというわけではありません。例えば,「訪問件数」や「提案件数」は「結果」です。レベルに合わせ,求める「結果」を明確にして,それを評価する仕組みにします。

■有効策2:仕事に期限を設定する

 「仕事に期限の設定がない」というのは,社員にとっては「時間を短縮する必要性がない」という状態です。自分のペースで,期限の目標もないまま仕事を進めていたのでは,時間を短縮する意識が乏しくなります。また,上司には,「期限」や「必要な時間」を見極める力が必要です。例えば,職場で,次のようなやりとりがされていませんか。
上司:「この仕事どれくらいでできる?」
部下:「だいたい1時間くらいで,できそうです」
上司:「そうか,じゃあ1時間でやってくれ」
 あるいは,
上司:「これ,2時間でやってくれ」
部下:「いや,3時間はかかりますね」
上司:「じゃあ,3時間で」
 これでは,「時間短縮」は実現しません。各自の時間に対する感覚はバラバラですから,本人任せにしたままで,時間短縮に対する感覚が鋭くなることはないのです。
 仕事に期限を設定しても,なかなか仕事が進んでいない場合は,優先順位をつけて取り組んでいるかを本人に確認します。その際は,上司の指示が曖昧で,業務の優先順位が決まらないこともあるので注意が必要です。「なる早で」「できる時にやっといて」などと指示されたうえに,「まだ,できてないの? 早くやってよ」と言われたらどうでしょう。部下の優先順位は崩壊します。上司には,
・必ず,指示に期限を設定すること
・期限は,部下の認識より手前に設定すること
を心がけてもらう必要があります。

(月刊 人事マネジメント 2018年8月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1979年、大阪府生まれ。2002年、早稲田大学卒業。同年、(株)NTTドコモ入社後、2006年ジェイコムホールディングス(株)入社。主要子会社のジェイコム(株)にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」と出会い独立。識学講師として数々の企業の業績アップに寄与。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、(株)識学を設立。

>> (株)識学
 https://corp.shikigaku.jp/