*

HRM Magazine

人事担当者のためのウェブマガジン | Human Resource Management Magazine
HOME

業績向上につながる「働き方改革」とは

Great Place to Work(R) Institute Japan
(株)働きがいのある会社研究所 コンサルタント 岩佐真裕子

 Great Place to Work(R) Institute Japan( 以降,GPTW)では,「働きがいのある会社」調査を通じて,調査実施企業の「働きがい」向上を支援しています。私たちは,「働きがい」=“働きやすさ”+“やりがい”と定義しています。近年,「働き方改革」の旗印のもと,企業では残業削減やリモートワークの推進など,様々な施策が進められています。しかし,施策の多くは“働きやすさ”の改善に主眼を置いているようです。GPTWでは,“働きやすさ”だけでなく“やりがい”をもたらすことが「働きがい」を高め,業績を向上させていくうえで重要だと考えています。

■“働きやすさ”だけでは業績向上につながらない

 GPTWの「働きがいのある会社」調査の結果をもとに,“働きやすさ”と“やりがい”の高低から4つの職場タイプごとの業績(売上の対前年伸び率)を分析しました。
-----------------------------
 @職場タイプA「いきいき職場」=働きやすく,やりがいもある
 A職場タイプB「ばりばり職場」=働きやすさはないが,やりがいがある
 B職場タイプC「ぬるま湯職場」=働きやすいが,やりがいがない
 C職場タイプD「しょんぼり職場」=働きやすさはなく,やりがいもない
-----------------------------
 その結果,A「いきいき職場」が最も高い値を示し,これに,B「ばりばり職場」が次いでいます。一方で,最も低かったのはD「しょんぼり職場」とC「ぬるま湯職場」で,同水準でした。業績を向上させていくうえで重要なポイントは,“やりがい”だといえそうです。また,D「しょんぼり職場」とC「ぬるま湯職場」が同水準であったことから,“働きやすさ”だけでは,業績向上につながらないといえそうです。さらに,B「ばりばり職場」よりA「いきいき職場」のほうが業績が高く,“やりがい”だけでは効果は限定的だということが示唆されました。結論としては,A「いきいき職場」を目指していくべきだということになります。

■「いきいき職場」から学ぶポイント

 業績向上をもたらす「働き方改革」を実現するためには何を行うべきか,「いきいき職場」での取り組みをもとに3つのポイントをお伝えします。

【1】ゴール・目的を明確にする:「働き方改革」を成功させるには,最終的なゴールをしっかり見据えることが重要です。目的が不明確では,施策の実施自体が目的化してしまいがちです。例えば,労働時間の削減であれば,それを通じて何を成し得たいのかをはっきりさせることが重要です。自社が掲げるビジョン,ミッションの達成なども踏まえて,「働き方改革」の位置づけを考える必要があります。

【2】経営トップが本気でコミットする:会社の本気度は経営トップから伝わります。経営トップ自ら従業員に語りかける場をどれだけ持っているか,改めて振り返ってみましょう。「いきいき職場」に該当するある企業の例では,年間70回以上かけて,社長が全国の拠点を訪問し,あらゆる立場,階層の従業員と対話する機会を設けています。

【3】現場の実態に寄り添い,現場を巻き込む:現場の実態を把握し,その声に耳を傾けながら進めることが重要です。現場が納得感を持って動くことができて初めてカルチャーとして定着します。例えば,「いきいき職場」に該当する企業では,部門横断のプロジェクトを立ち上げ,従業員が自ら企画・推進する取り組みを多く行っています。

 上記を参考に,“働きやすさ”だけではなく“やりがい”に目を向けた「働きがい改革」に舵を切っていくことが業績向上の重要な鍵になるといえます。

(月刊 人事マネジメント 2018年9月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
保険会社にて、営業・企画などを経て、Great Place to Work(R) Institute Japan に参画。大手企業を中心に各社の調査実施のサポート、分析報告を担当。さらに、調査データの分析研究やグローバルプロジェクト対応などにも幅広く携わっている。

>> Great Place to Work(R) Institute Japan
 (株)働きがいのある会社研究所
 http://hatarakigai.info