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組織のほころびを見逃すな

(株)リンクイベントプロデュース ファシリテーター 広江朋紀

 組織には見逃してはいけない小さな兆しがあり,リーダーはメンバーやチームの成長に向けて,“これはおかしい”と思う違和感にも心を配り,必要があれば手を打つ思慮深さとフットワークの良さが求められます。具体的には,成果につながらない真因やそのまま放置するとリスクをはらむ隠れた問題に鼻を利かせて把握し,先手を打つことが必要です。
 犯罪学に「壊れ窓」(Broken windows)という理論があります。1枚の割れた窓のように,ほんの少しのほころびが,毎日その建物の前を通る人に向かって負のシグナルを発し,やがては,凶悪犯罪につながることを戒める理論として紹介されることが多く,こうならないよう,少しの変化や兆しを見逃さず,できるだけ早い段階で改善の手を打つことが有効です。誰が見ても分かる大きなことになってから警鐘を鳴らすのではなく,まだ問題の芽が小さなうちに,気づいて対応する力がリーダーには必要なのです。それでは,組織が衰退するシグナルはどこに表れるのでしょうか?

■衰退の兆候10のシグナル

 危険な兆候のなかでも,企業・組織に共通して見受けられる代表的な10のシグナルをご紹介します。
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 @売り上げ目標の下方修正を最近何度か繰り返している
 A具体策がなくとも「できます」「やります」と言っておけば経営陣は目を細めている
 B退職者には優秀な人材が多い
 Cオフィスのレイアウトは座席変更がここ数年全く行われていない
 Dマネジャーから数字目標の伝達以外に戦略が語られることはない
 E忌憚のない発言をしてほしいとの社長の指示に従うと後でマネジャーに怒られる
 F上司と部下が 1 on 1 で話す機会が少ない
 G顧客対応よりも社内の問題の火消しに奔走している
 H管理職が仕事に疲弊しておりメンバーがマネジャーを目指したがらない
 I「働き方改革」で早帰りの退社を奨励しているがメンバーは仕事を持ち帰っている
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 いかがですか? このうち 1/3 以上が当てはまると黄色信号です。これらのシグナルをキャッチしたら早期の対応が必要です。

■先手でコントロールしていくヒント

 ほころびを見逃さずに先手を打つためには,上記にご紹介した10の衰退シグナルを予め踏まえることに加えて,業界・競合動向や顧客ニーズの変化に対し,敏感に鼻を利かせることが有効です。そのためには,社内に留まるのではなく,積極的に外に出る勇気を持ちましょう。様々な拠点に実際に足を運び,製造ラインや販売店舗,時には,自分自身が顧客体験をし,ユーザーの視点に我が身を置いて問題を異なる角度から見つめてみるのです。また,様々な情報が入るよう,業界を超えた人脈を広げていくことも有効です。すると,自分では考えも及ばなかった視点が浮かび上がってきます。自分と異なる意見を歓迎する力を養うことも先手を打つうえで重要です。また,長期的には,トレンドを踏まえ,自分なりの変化の自説を持ち,短期的には,日常で,ちょっとした顧客ニーズの変化を察知したら,受け流すのではなく,なぜそう感じたのか,その違和感を変化の芽として探究する姿勢も欠かせません。
 最後に,アメリカの著名なSF作家,アイザック・アシモフ氏の名言を紹介します。
 The most exciting phrase to hear in science,the one that heralds the most discoveries,is not“Eureka!”(I found it!) but“That’s funny…”. 科学の世界で最も興奮するフレーズ,新発見を予感させるフレーズは,「エウレカ!(見つけた!)」ではなく「これは,おかしいな…」だ。
 おかしいと感じたときが,手を打つチャンスです。

(月刊 人事マネジメント 2019年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
産業能率大学大学院卒(城戸研究室/組織行動論専攻/MBA)。出版社勤務を経て、2002年に(株)リンクアンドモチベーション入社。モチベーションエンジニアとしてクライアントの採用、育成、人事制度構築、経営ビジョン策定・浸透プロジェクト推進と、一貫して組織課題の解決に向けたコンサルティング業務に従事。ヒューマンリソース領域における豊富なコンサルティング経験を基に研修講師、組織開発ファシリテーターとして活動中。延べ研修実績300社超、受講者3万人超、年間稼動170日を越える。参加者を本気にさせる、場創りの力に定評があり、顧客リピート率、参加者満足度、同社トップクラス。研修講師・ファシリテーターの養成も行っている。

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