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ローパフォーマー対応3つのポイント

マンパワーグループ(株) ライトマネジメント事業本部 シニアコンサルタント 難波 猛

 最近,ローパフォーマー(以下LP:期待役割と成果にギャップが生じている人)への対応について相談が急増しています。LPは,なぜ発生するのでしょうか,どう対応すればいいのでしょうか。

■ローパフォーマーはなぜ発生するのか?

 LPの発生原因には,外的要因(環境)と内的要因(本人)があります。
@外的要因:働き方改革・AIの進化・人生100年時代等の環境変化に伴い,求められる役割が複雑化,働く期間が長期化し,期待役割と成果の間のギャップが生じやすくなっています。
A内的要因:Will(やりたいこと)・Must(やるべきこと)・Can(できること)のどこかにズレが生じると,成果が出なくなります。内的要因では,以下のような働きかけが改善のヒントになります。
●Will…「業務上やりたいこと」以上に「人生において大事にしたいこと」を上司が理解・把握することで,中長期での動機づけが可能になります。
●Must…「会社や上司の期待」と「本人が認識している期待」にズレがないか,定期的に確認します。特に,経営戦略の変更や技術革新が多い組織では,期待認識にズレが生じやすくなります。
●Can…「自分が好きでできる」かつ「将来にわたり,周囲に求められる」能力・スキルを,本人と上司が見極めることが重要です。

■ローパフォーマー対応3つのポイント

 長期的に相手の成長を本気で考え,具体的な行動改善の指導を行うポイントは,以下の3点です。
@上司の“意識”を変える
 LP対応を“面倒な割に見返りが少ない,できれば避けたい”と感じる上司がいるかもしれません。組織運営や目標達成に真剣だからこそ“LP対応より,他に時間・労力を集中させたい”と考えがちです。ただ,問題の先送りや塩漬けは,本人の成長や改善機会を阻害するだけでなく,周囲のモラルを低下させます。また,「対応しないこと」が「無視」や「切り離し」というパワハラにもなりえます。
 一定期間(3〜6ヵ月),LP社員と本気で向き合って一緒に改善に取り組むことが,改善したときの感謝・感動(本人),職場のモラルの向上(周囲),組織運営や人材育成スキルの向上(上司自身)につながると考える上司の意識変革が重要となります。
A本人の“行動”を変える
 LP対応では“主体性に欠ける”“協調性が足りない”等,性格に焦点を当てがちですが,ハラスメントリスクの上昇(人格の否定)と,本人が何を改善すればよいか分からないという点で,推奨できません。性格や考え方ではなく,「目に見える行動」にアプローチするほうが現実的で,うまく機能します。
 例えば“協調性が足りない”と上司が感じた場合,具体的な問題行動を明確化します(例:会議に毎回遅刻する/他社員の業務を手伝わない,等)。そのうえで,【改善してほしい行動を伝える】→【行動が変わる】→【賞賛する】→【改善行動が反復される】→【周囲の評価が変わる】→【本人の意識が変わる】というステップで変革を促していきます。
B会話の“主語”を変える
 LP社員の行動変容には,コミュニケーションの「主語」も重要です。会社や上司の都合を前面に出すと,本人には響かず改善につながりません。「上司の私が困る」「周囲が迷惑する」など,本人以外を主語に(口に出さなくとも,文脈として)話をすると逆効果になります。「(あなたが目指す姿に向けて)一緒に改善しよう」「(あなたの成長のために)厳しいことも正直に言う」等,「あなた」を主語にすると,メッセージは伝わりやすくなり信頼関係の土壌ができます。

(月刊 人事マネジメント 2019年10月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1974年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。株式会社PHP研究所(出版社:営業)、株式会社太陽企画(リクルートトップパートナー/求人広告:営業、人事)を経て、2007年に株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ株式会社)に入社。提案営業、研修講師、人事コンサルタント、タレントマネジメント事業部部長として、日系・外資系企業を問わずキャリア開発施策、人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修等を100社以上担当。人事向けセミナー講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。

>> マンパワーグループ(株) ライトマネジメント事業本部
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