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ニューノーマル時代に求められる管理職とは

(株)リンクアンドモチベーション 取締役 川内正直

■リモートワークで問われる「マネジメント力」

 新型コロナウイルス感染症拡大によって,急遽多くの企業が「リモートワーク」への切り替えを余儀なくされました。緊急事態宣言の解除に伴い,徐々に景気回復の流れも見られますが,第二波襲来への懸念など,依然として不透明な状況が続いています。このような急激な環境変化に対して,多くの企業が混乱に陥りました。なかでも,課題とされたのが管理職の「マネジメント力」です。今,変化に適応できない管理職が苦戦を強いられています。
 そもそも管理職に求められる役割とは何でしょうか。当社では,毎年数多くの管理職研修を実施していますが,管理職の役割を「経営と職場をつなぐコミュニケーションのつなぎ目(結節点)」と定義しています。実際,会社のビジョンや戦略が職場で実行され,業績の上がっている組織では,管理職が「結節点」として機能している一方,管理職が「結節点」として機能していない組織では,会社がどのようなビジョンや戦略を掲げたとしても,現場での実行度は下がり,結果的に業績は上がりません。このように,会社と職場の距離を縮めるために,「経営と現場」「自部署と他部署」の間をつなぎ,間の問題を解決できる唯一の立場が管理職なのです。
 加えて,管理職が会社と職場をつなぐ「結節点」の役割を果たすためには,「情報提供」「情報収集」「判断行動」「支援行動」の4つの機能が重要であることを研修内ではお伝えしています。
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 ■情報提供:会社の方針などの戦略情報や,自部署の使命・目標などの役割情報の提供など
 ■情報収集:メンバー各人の特性や業務の進捗状況の収集など
 ■判断行動:メンバーに求める行動の基準やポイントの提示や各種業務の判断など
 ■支援行動:ノウハウの伝授や迷っている際の適切なサポートなど
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■「情報収集」をアップデートすることの重要性

 管理職には,4つすべての機能を高め続けることが求められますが,リモートワーク導入後,重要度,難易度共に高まったのが「情報収集」です。
 出社して直接コミュニケーションが取れていた頃は,メンバーの成長課題を把握することはもとより,ふとした言動や表情からコンディションの好不調も感じ取ることができていました。しかし,リモートワークによってメンバーの状況が見えず,これまでと同様の方法での「情報収集」がしにくくなりました。結果として,適切な「判断行動」「支援行動」につなげられず,最悪の場合「結節点」どころか,メンバーの会社に対する不信感を醸成してしまうケースもあります。
 このように物理的距離があるリモートワーク環境下では,どのように「情報収集」をすればよいのでしょうか。私は,2つの方向性があると考えています。1つは,メンバーから情報収集できる「場」を作ることです。オンライン朝会・夕会や,1 on 1などを活用し,定期的なコミュニケーションの機会を設けることなどが効果的です。もう1つは,メンバーが情報発信しやすい「風土」を作ることです。率先して発信してくれたメンバーを組織全体で称賛するなど,“他愛もない情報でも発信できる風土”を作ることで,メンバーの発信に対するハードルを下げることが重要だと考えています。
 これまでにない新しい働き方が求められていくなかで,会社と職場をつなぐ管理職にも変化が求められています。時代に合わせて自らをアップデートし,推進できる管理職こそが,ニューノーマル時代の新たなロールモデルとなるのではないでしょうか。

(月刊 人事マネジメント 2020年8月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
早稲田大学卒業後、草創期の(株)リンクアンドモチべーションへ入社。採用、育成、人事制度構築、経営ビジョン策定・浸透プロジェクト推進と、一貫して組織課題の解決に向けたコンサルティング業務に従事。 大手企業からベンチャー企業まで幅広い顧客企業の変革を成功に導く傍ら、大阪支社・西日本統合拠点立など多くの新規拠点立ち上げに関与。2014年に大手企業向けコンサルティング事業の執行役に就任し、2018年に取締役就任。現在は、組織開発本部にてコンサルティング・クラウド部門を統括。

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