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リモートワーク時代の自律型人材の育て方

合同会社社外人事部長 代表社員 長谷川 満

 新型コロナウイルスの影響で,リモートワークを導入した企業は多いことと思います。ただ,リモートワークを導入したものの,理想とする在宅勤務には程遠く,自宅待機に近い形になってしまったという企業もあります。また,緊急事態宣言を契機にリモートワークに踏み切ったものの,宣言解除後は,元のようにオフィスに出勤する体制に戻してしまった企業もあります。

■働き方の抜本的な改革とは?

 一方,コロナ禍という有事に対して,『真の働き方改革』とでもいえそうな「働き方の抜本的な改革」を実行している企業もあります。このような「働き方の抜本的な改革」の特徴には,@本業集中経営,Aリモートワーク・自動化(固定費を抑えた経営),B人間が価値を生む,の3点が指摘できます。1つひとつ解説していきましょう。
@本業集中経営:人やお金の困りごとを減らし,本業(営業活動)に集中する経営。
Aリモートワーク・自動化(固定費を抑えた経営):リモートワークの体制を構築することやロボットプログラムの活用などで,可能な業務は自動化を進め,交通費や家賃などの削減(オフィスコストの最小化),つまり大幅な固定費を抑えることができる経営。
B人間が価値を生む:AIやロボットが発達してそれを仕事で活動していくことが当たり前になっていくと,仕事をする人間が価値を提供し,人間が行ったほうがよい業務のみ残っていく。そのため,お客さまからの支持を得られる人柄やキャラクター,コミュニケーション力を強化する経営。

■リモートワーク時代の自律型人材の育て方とは?

 これらのことを前提に,実際に働く人たちに焦点を当てた「リモートワーク時代の自律型人材の育て方」を考えてみたいと思います。私なりの結論を先に申し上げると,@仕事の棚卸を行い,徹底的に仕事を捨てる,A自動化できることは自動化する,B仕事のプロセスは極力管理をしない,C未来の役に立つための課題を提供する,D定期的にコミュニケーションをとる,の5点になります。こちらも, 1つひとつ解説していきましょう。
@仕事の棚卸を行い,徹底的に仕事を捨てる:先の「@本業集中経営」の体制づくりを実現するために,現状の仕事を客観的に整理して,やらなくてよい仕事を徹底的にそぎ落とすところからスタート。
A自動化できることは自動化する:棚卸した仕事のなかで,ロボットやシステムなどで自動化できることは自動化していく。
B仕事のプロセスは極力管理をしない:人間の心理に基づき,やらされ感をなくし,主体的に働くきっかけを作るべく,ホウレンソウを自ら定期的に行う体制を構築する。
C未来の役に立つための課題を提供する:例えば,マニュアル作成や新規事業のプレゼン大会など,未来への投資につながるようなことを主体的に取り組んでもらう仕掛けを作る。
D定期的にコミュニケーションをとる:リモートワーク化が進む仕事のプロセスを細かく管理しない分,主体的に仕事に取り組んでもらうため,放置状態にならないよう定期的にオンラインなどでコミュニケーションを図る。こうした関係性を構築していくことで,自律型人材へ進化するきっかけにする。
 最後に「リモートワーク時代の自律型人材の育て方」をまとめると“本業集中経営を実現すべく徹底的に仕事をそぎ落とし,自律型人材に育てていくためにリモートワークの環境整備を進めていくこと”となります。

(月刊 人事マネジメント 2020年9月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
島根県出身。人材育成会社の社長秘書を経て,2000年に住宅メンテナンスのベンチャー企業に転身。人事部をゼロから立ち上げる。人事部長として社員1人ひとりと向き合い,人材採用・育成・風土づくりを推進。8年間で社員数・売上規模を10倍に成長させ,その原動力となる。若者が自動的に戦力化する仕組み,人材採用や育成のオリジナルプログラムなどを次々に構築。『ワールドビジネスサテライト』ほか30以上の媒体に取り上げられる。2009年に独立。人事部を持たない中小企業の社外人事部長の役割を担う独自のコンサルティング業務を展開。社長の良き理解者となり,企業規模を数倍にさせるお手伝いに喜びを感じている。

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