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「リモートトラスト」を高めよう

(株)ライボ 経営企画室広報グループ長 兼 Job総研室長 堀 雅一

 弊社が運営しているキャリア相談プラットフォーム「JobQ(ジョブキュー)」では,様々な仕事上での悩みが日々投稿されています。そこで昨今増加傾向にあるのが,リモート環境でのコミュニケーションが関係した相談です。
 近年働き方の変化や情報化社会,デジタル化時代への転換期により,世代間のギャップが顕著にみられる時代になりましたが,この背景も相まって適切な場面でも叱れない上司が増加傾向にあります。「叱る」とは感情的にならず,相手の成長を考えて是正したほうがよいところをロジカルに指摘し,指導することです。しかし,叱れない上司が増えると部下たちの成長は加速度的に鈍化していきます。また,世代間ギャップを気にするあまり,部下と距離を置いてしまうと,上司自身のリーダーシップスキルも磨かれず,組織的な成長鈍化も懸念されます。

■リモートでも信頼関係を築くには

 「叱れない上司と叱られたい部下」というすれ違いはコロナ禍でさらに悪化しました。その背景の1つがテレワークの増加です。テレワークでは対面よりも比較的マネジメントが難しいといわれ,コミュニケーション,仕事の進捗把握,適切なフィードバックなど課題が多く挙げられています。
 そこで,リモート環境下でも信頼関係を構築していく手がかりとなるのが,「リモートトラスト」という考え方です。リモートトラストは対面で一度も会ったことのない人と,リモートのやりとりだけで信頼関係を構築することができるビジネススキルのことです。テレワークが増加した近年では,このスキルを習得,発揮できていると,社内外でのやりとりがスムーズになり,関係構築が進みます。また前述した「叱れない上司と叱られたい部下」というすれ違いを回避するうえでも非常に効果的なスキルといえます。
 まず押さえておきたいのは,対面で会ったことのある人のほうが信頼しやすいという傾向です。これは相手がどんなふうに相槌を打ち,こちらの質問にどう反応してくれているかなど,目の前の相手を五感で把握できるからといわれています。リモートではこの五感から得る情報が圧倒的に少ないことから,対面時よりも意識したコミュニケーションが必要になります。リモートでコミュニケーションをとる際は,参加しているすべての人がこのことを意識するとさらに効果的です。

■意識して五感を補うアクションを

 具体的には,対面では無意識にしている相槌,笑顔,ジェスチャーなどを踏まえた伝え方が,リモートでは伝わりづらいという意識を持つことです。さらに対面では五感で情報を得ていることから,ニュアンスで相手の発言主旨を捉える場面も多くありますが,リモートではこれが難しいことも理解したうえでコミュニケーションをとることも大事です。また関係構築の促進には雑談や仕事以外でのコミュニケーションも有効とされます。例えば「仕事上では厳しい人だけど,仕事以外では意外にもユーモアがあって楽しい人だな」と理解できれば,対人関係に深みが出てきます。上司と部下の関係であっても,普段から雑談のできる関係にあれば,コミュニケーションは深まり,相手の性格や特性を理解したうえで,適切な距離感を保つことができます。
 こうした表情,目線,声,ジェスチャーなどが,相手に情報を伝えるうえで大きな手助けをしてくれることを組織内で共有しておくことをお勧めします。上司と部下の関係に限らず社内外での関係構築をより良いものにしていけるように「リモートトラスト」を意識してみましょう。

(月刊 人事マネジメント 2023年6月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
2021年にJob総研を立ち上げる。その後“働く社会人や就活生”を中心に様々な観点から意識や行動などについて調査研究を実施。市場の現状と未来を分析し、 社会へ発信することで働く社会人や就活生の選択機会に貢献する事を目的としている。またJob総研の調査をもとに各大学で 「キャリア設計」の授業 を実施する他、多くのメディアでキャリアや働き方など社会との関連などを解説している。

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