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キーワードが示す転職市場の変化

Indeed Hiring Lab エコノミスト 青木雄介

 Indeedの労働市場調査・研究機関Indeed Hiring Labでエコノミストを務める青木雄介です。2023年12月に公開したレポート『2024年日本の労働市場の展望』から,人事担当者の皆様に着目していただきたい転職市場のキーワードを解説します。

■人事部門が打ち出す次の一手のヒント

 慢性的な人手不足は今年も続く見通しですが,一方で働き方やキャリア形成に対する価値観の多様化,賃上げ機運の高まりなどを背景に,昨年の転職希望者は初めて1,000万人を上回るなど,労働市場は徐々に流動化しています。では,昨今の転職希望者にはどのような特徴があるのでしょうか?
●シニア
 まずはシニア世代の増加です。総務省「労働力調査」によると,転職希望者全体に占める55歳以上の割合は10年前の15.8%から18.7%(2023年第3四半期)に増加。全体と比較して増加速度が顕著です。求職者の関心を反映したIndeedの検索トレンドでも,シニア関連のキーワード検索数は全体の約2%(比較的高い水準)を占めており上昇傾向です。一方,シニアは転職活動において年齢に不安を抱えていることも事実。企業は就労時間や働き方,仕事内容に柔軟性や選択肢を設けることで,就労意欲のあるシニアの活用が円滑になり,人手不足の緩和・解消にもつなげられる可能性があります。
●リモートワーク
 2点目はリモートワークへの関心です。Indeedの検索ワードのトレンドでも検索数の2%超を占める高い水準であり,一貫して上昇傾向にあります。求職者は関心のある職種や仕事内容をキーワードにする傾向があり,リモートワークが仕事を選ぶうえで重視する働き方として定着しつつあることを示しています。従って,企業は従業員の定着や新たな人材獲得に向けて,出社とリモートワークを選択できるハイブリッド型など柔軟な働き方を提供することが有効であるといえます。
●賃金
 続いては,より高い賃金への関心です。求職者に検索される賃金は平均的に上昇傾向。月給では「40万円」で検索される割合が「20万円」を上回っています。同様にパート・アルバイト等の仕事探しで検索される時給も上昇。検索時給の平均は2024年1月時点で1,490円でしたが,これは2019年1月時点の1,263円と比較し18%上昇しています。特に,物価に対して最低賃金が相対的に低い地域では,希望する賃金が大きく上昇しています。企業は,地域の物価に応じた求職者の求める賃金を把握し,給与に反映していくことが重要となります。
●異職種
 最後は求職者の異職種への関心です。Indeed履歴書の登録データと求人クリックデータの分析の結果,一部の募集職種では異職種の求職者からのアクセスが増加傾向にあります。例えば,ソフトウェア開発という職種にはDX推進などへの関心を背景に小売り,事務,営業など異職種からもアクセスされています。しかし,希望職種とスキル・経験との乖離が大きいと,転職は実現しません。求職者がリスキリングに取り組むのと同時に企業が未経験の人材を社内で育成する体制も有効であるといえます。

■求職者のニーズに常にアンテナを張る

 Indeedでの求職者の検索行動から,転職市場における求職者の傾向や関心を明らかにしました。人材獲得競争が進む今,企業は求職者のニーズに常にアンテナを張って柔軟に対応していく必要があるでしょう。また,その取り組みをアピールすることで,求める人材へのリーチにつながるといえます。

(月刊 人事マネジメント 2024年5月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
2012年東京工業大学工学部卒、2013年英国 UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンド ン) 経済学修士。その後、外資系コンサルティングファーム等でエコノミストデータサイエンティストとして政府・民間 司法機関に向けた経済統計分析および報告書作成に従事。2022年8月より現職。Indeed のデータを活用してOECD各国および日本の労働市場を分析し、外部関係者に向けて分析結果・インサイトを発信している。

>>  Indeed Hiring Lab
  https://www.hiringlab.org/jp/





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