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“ほめて育てる”社員教育で企業業績を高めよう

(株)スパイラルアップ 代表取締役
(一社)ほめ育コンサルタント協会 代表理事 原 邦雄

 ひと昔前と違い“ほめて育てる社員教育”が主流になりつつあります。とはいえ,ほめられずに育った世代にとっては未知の領域。「よくやった」「すごいな」とほめているのに一向に成長しない,むしろ逆効果な気がする……そんな悩みを抱える方も多いことでしょう。ほめる教育は大切ですが,何でもかんでもほめればいいわけではありません。

■“ほめる基準”を作ることが重要

 ほめる教育で大事なのは,何をしたらほめるのかという基準です。基準を満たしていればほめる,そうでなければほめない。このシンプルな繰り返しが社員の成長を促し,業績につながります。では,どんな行動を基準にすればよいのでしょうか? それはずばり“会社の利益につながる行動”です。
[ほめる基準]売上が伸びる行動
 例えば営業部門であれば「新規顧客開拓のために,自社商品の優位性を丁寧に洗い出した」「リピート率を上げるために,顧客が大切にしていることをヒアリングし,社内で共有した」といった行動が挙げられます。企画・開発部門であれば,「ブランド認知度を上げるために,ターゲット層が集まる施設で魅力的なイベントを開催した」「お客様の声をもとに,即日改善を始めた」などの行動です。
 「こんなに丁寧にヒアリングに回答してもらえるのは,普段から信頼関係を築けている証拠。頑張りが分かるよ」……ぜひ,このようなほめ言葉をかけてください。ほめる際は,どういった点を評価しているのか,具体的な言葉で伝えることが重要です。
[ほめる基準]経費が下がる行動
 どんなに売上が増加しても,経費がかかりすぎると利益は伸びません。ですから“経費が下がる行動”もほめる基準にしてください。
 例えば「文房具の購入単価を抑えるために,複数のプロダクツを検討し,1つのメーカーに統一した」「リモートワークがしやすい環境を整え,オフィスコストを削減した」などがあるでしょう。ただし,経費削減で社員が不利益をこうむったり,取引先に迷惑をかけたりする形は望ましくありません。「よくここまで調べたな。おかげで経費を下げながら,よりよい形になったよ」といったように,事実だけではなく過程もほめるようにしましょう。

■「相手のために」を見つけてほめる

 企業にとって数字は大切ですが,数字だけを追う集団になっては関係がギスギスしてしまう恐れがあります。そこで“思いやりがある行動”についてもほめるようにします。
[ほめる基準]思いやりがある行動
 例えば「体調不良の同僚の代わりにレポートを作成した」「落ち込んでいたチームの様子を見て,明るい言動で盛り上げた」といった行動があるでしょう。思いやりがある行動をほめると,プラスアルファの効果が生まれます。それは,ほめられた側が「もっと思いやりがある行動をしよう」「ほめてくれた相手にも何かしたい」と思うことです。これを「返報性の原理」といいます。返報性の原理が働くと,「相手のために」という文化が社内に芽生えます。すると身近な人のための,プラスワンの行動が広がり,結果として売上を生むためのきっかけとなり,業績がアップしていくのです。
 社員は「何をしたら売上が伸びるのか?」「人に何をしたら喜ばれるのか?」を知っているはず。でも,その行動をほめられなければ,次の行動を起こすきっかけを失ったり,やる気をそがれたりするものです。だから,利益につながる行動をしたときや,「相手のために」という行動をしたときは,必ずほめてください。業績アップの道が開けてきます。

(月刊 人事マネジメント 2024年9月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
兵庫県芦屋市出身。大学卒業後、メーカーを経て、船井総合研究所に転職。様々な業種の人材育成に関わる。そのなかで、従業員のエンゲージメントを高めることの重要性を実感し、独自の教育メソッド「ほめ育マネジメント」を開発。これまでに600社以上の企業や教育機関に研修を行っている。また国内だけでなく、アメリカ、インド、中国、オーストラリアなど世界20か国にも進出。

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