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フリーランス新法のリスクと対応策

(株)テックビズ 代表取締役 中島一樹

■フリーランス保護新法が目指す働き方とは

 近年,フリーランスという働き方は大きな注目を集め,その人口も増加しています。もっとも,発注企業から契約内容の一方的な変更や報酬の支払い遅延など,安心して働くための環境整備は十分とはいえません。例えば,フリーランスの40.7%が仕事中に孤独を感じていることが明らかになっています(※)。特に経験年数や年齢が低いほど孤独感や不安を抱えやすく,メンタルヘルスへの課題が顕在化している状況です。そして,2024年11月1日にはフリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行され,日本の労働市場は新たな転換期を迎えました。本法は,書面等による取引条件明示の義務化,不当な報酬の引き下げや支払い遅延の禁止,ハラスメント防止処置の努力義務,さらに出産育児等への配慮など,多岐にわたる施策を通じて取引適正化および就業環境整備を目指しています。しかし,新たな法律が施行されるにもかかわらず,フリーランスとの契約管理や労働環境の整備に関する具体的な問題点は依然として残っており,74.5%の企業がフリーランス活用に課題を感じているようです。
 ※(株)テックビズによる調査結果(2024年10月10日)。

■発注企業が特に注意すべき3つのポイント

 フリーランス保護新法の施行によって,発注企業はフリーランスとの契約の際,書面などによる取引条件の明示や,報酬支払期日の設定・期日内の支払いが義務となります。新法の内容に違反すると事業者名や違反内容などが公表されるリスクがあり,注意が必要です。
@契約内容の明確化:条件提示にあたっては,業務範囲,納期,支払い条件など9つの項目を明確に記載することが必須です。これにより,トラブルの発生リスクを大幅に軽減できます。特に取引条件の明示が書面または電磁的方法で義務付けられており,法的基準を満たした書式が求められます。
A支払いスケジュールの管理と遵守:新法では,報酬の支払期日は,発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り短い期間内で設定し,決めた期日までに必ず支払いを行う必要があります。予算管理の徹底と,システムなどを活用した支払いスケジュールの効率化をお勧めします。
B中途解除等の事前予告・理由開示:フリーランスに対して6ヵ月以上の業務を委託している場合,業務委託契約を中途解除したり,更新を止めたりする際には,原則30日前までに予告しなければなりません。また,その方法は,書面,ファクシミリ,電子メール等によるものとされています。
 その他,フリーランスに対して1ヵ月以上の業務を委託した場合には,発注事業者が注意すべき禁止行為などの内容が異なります。違反が認められた場合には,公正取引委員会や中小企業庁長官,厚生労働大臣による助言・指導のほか,立入検査,勧告,公表,命令といった措置が講じられる可能性があります。さらに,命令に違反した場合や検査拒否が発覚した場合には,50万円以下の罰金が科せられることもあるため,法令遵守を徹底し,リスク管理を強化することが求められます。
 これらのルール厳守の対応策としては,社外の法務専門家やコンサルタントとの連携があります。専門家に相談することで,法的リスクの軽減は可能です。また,新法施行に向けてサポートサービスを開始する企業もあります。例えば当社でもフリーランス活用におけるトラブル発生時の全額返金保証で企業の不安を解消するサービスを開始し,フリーランス活用の総合サポートを提供しています。

(月刊 人事マネジメント 2025年2月号 HR Short Message より)

HRM Magazine.

 
1989年、兵庫県生まれ。筑波大学卒。2011年、大日本印刷株式会社に新卒入社。大手金融機関やスポーツメーカーのBPO業務を担当する営業職を経験。2015年、株式会社NKC ASIAを設立し、ITフリーランスと案件とのマッチングサービス「テックビズフリーランス」を展開。2019年、事業成長に伴い、株式会社テックビズを分社化。創業以来、増収増益を重ね続け、ITフリーランス業界3位(2022年9月現在)にまで成長。フィナンシャルタイムズ誌の「アジア太平洋地域における急成長企業ランキング」では、51位にランクインしている。

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